前田司郎「愛でもない青春でもない旅立たない」(講談社)


愛でもない青春でもない旅立たない

愛でもない青春でもない旅立たない


劇作家でもある著者の初小説。
センスを感じさせる会話が随所に。それだけで十分価値があるけど、うーん、評価はちょっと保留ということで。


劇的なことが何もおきなくて、それがよいとかいう書評をどこかでみた。けど、褒めるとこはソコだろか? 違うと思う。
途中で出てくる夢やラストのプチ暴走をよしとする向きもあるかもしれないけど、どう見ても全体の足を引っ張ってる。ラストははっきり言ってただの「ブン投げ」だろう。


じゃ、よくないのかといったら、そんなことは全然ない。
いくつかの場面は、そんな切り出し方見たことない、てな感じで、とても魅力的だ。イメージする映像がどれも美しく感じられて、これってすごい才能だと思う。


書くかどうか迷ったけど、やっぱり書いとこう。
この小説は、古谷実のかの大傑作「グリーンヒル」の影響をはっきり受けている。違うかな。「なにそれ? 読んだことないし」とか著者に言われたりして。でもきっとそうだ。いやどうかな。

断っておくけど、影響受けてるからダメとか言ってるんじゃない。「ただ触発されただけ」以上のものを、本作は(そこここで破綻しちゃってるとはいえ)提示しようとしてる。それが何か部分的に実を結んでいるような気もするのだ。もしほんとにそうなら、そりゃ立派な仕事だ。でも、ちょっとこの見方にはいま一つ自信がない。なので勝手ながら保留。


とりあえず他の作品を読むことにしよう。少し間を空けて。あ、それより、著者の戯曲が上演されるのを見たいな。それにしても、岸田戯曲賞の選評のアップが遅いぞ、白水社


グリーンヒル(1) (ヤンマガKCスペシャル)

グリーンヒル(1) (ヤンマガKCスペシャル)

グリーンヒル(2) (ヤンマガKCスペシャル)

グリーンヒル(2) (ヤンマガKCスペシャル)

グリーンヒル(3) (ヤンマガKCスペシャル)

グリーンヒル(3) (ヤンマガKCスペシャル)