原武史「滝山コミューン一九七四」(講談社)


滝山コミューン一九七四

滝山コミューン一九七四


この衝撃力の正体はなんなんだろう?

6月ごろに一度通読。死角から突然眼前にかつて見たこともないものをずんと突きつけられたような圧倒的な衝撃。ほとんど脳バースト状態。知的刺激に興奮させられることもさることながら、読み物/エンターテインメントとしてもあまりに個性的な魅力を放つ作品。
読了直後もう1回すぐにも読みたいと思ったものの、あまりにもお腹いっぱい胸いっぱいになってしまっていたため、攪拌された頭の中がおさまってからがいいかなとしばらく放っておいたのをようやく手にとる気になって、このほど再読。

あらためて、着想の凄さ、斬新さに驚く。
さらに、熱意というか、執念というか、本書を1つの作品に昇華させるにいたるまでの著者の情念の大きさ・深さ・持続力等々には、感心などというレベルを遙かにぶっ超え、ほとんど絶句する。凡人にはまったく思い及ばない領域。稀有な才能に、一読者としてただただ感謝するほかない。

実は2度読んだ今もなお、まだまともに感想を書ける気がまったくしない。攪拌は一向におさまらない。そして、それがどうしてかがよくわからないところがこの作品を読み終えての、ある意味最大の果実となっていることに気づかされる。楽しく、心地よく、そして地面を揺さぶられるような刺激。

さらにもう少し間をおいてまた本書と、そしてそれを読む自分自身と対峙してみたい気にさせられている。が、そうしてもなお自分の考えがまとまるのか、受けた衝撃の理由をきちんと整理できるのか、自信はまったくない。いろんな意味で稀有な一冊。