日経新聞3月13日付朝刊1面記事

日経新聞が今朝の1面で、以下のような記事を載せている。

  日経「日興、上場廃止へ」報道の経緯

これ、記憶されていい事案だと思う。新聞がこうした説明文を載せることは頻繁にあることじゃないし。

本件に関するここ数日の各社の一連の報道は、昨夕以降いろんなところで「誤報」などと断じられたりして、多くの批判を浴びてる模様。そうしたなか、日経はこうした文章を1面に載せるという決断をかなり早い段階で下したことになる。
もちろん、載せた文章の中身の評価は別にある。決して十分な説明にはなってないし、末尾の「この決定までの経緯も含め、今後とも本紙はこの問題について詳細に取材、報道していきます。」の一文も、皮肉っぽいというか、潔くないというか、読む人によっては意趣返しの予告とも恫喝まがいとも受け止めてしまいかねない、なんとも微妙な内容。でも、それはそれとして、曲がりなりにも1面にこの一種不名誉な文章を載せてきた。それは記憶されていいと思う。
もちろん訴訟リスク軽減という別の目的があるだろうことは、想像に難くないけれども。

また、この観測記事を最初に報じた日経と、五月雨式に後追いした朝日新聞をはじめとする他紙では、負ったリスクの量が全然違うという一点も、一応メモっておこう。

ちなみに、日経を後追いした他紙の中には今朝の記事で「一転して」とか「方針を変更して」等の表現を用いていたところがあった。
その文面からは、一連の記事によって、多くの読者をミスリードしたかもしれないことについての責任感や、ひょっとしたら不利益を被ったひとがいるかもしれないという報道する側の想像力といったものが、まったく感じられなかった。「まあ、こんなもの」とも思うが、国内指折りのジャーナリズムがこれかと思うと寒い。

言わずもがななんだけど、日経を含む各社は掲載にあたって、どの程度のリスクがあるかを考慮し、各方面への影響にも思いをはせ、そのうえで「ゴー」を決めたに違いない。結果的に予想の範囲内における、かなり大きい方のリスクが実現した格好だけども、各社はそれによるダメージを予見していなかったわけでは決してないだろう。そうしたリスクを負ってでも書くときは書く、という姿勢は、おそらく報道機関には必要なものだ。それがなきゃ、過去の光り輝くスクープ記事だってありえなかったわけだろうし。だからこそ、矜持をもって、リスクを背負ってでも書くべきとき書けばいいし、それがもしも結果的に「誤報」だったならば、顕在したリスクを粛々と引き受ければそれでいいはずなんだけど実際は……などとまでいうと、綺麗事に過ぎるのかもしれないけど。

ここまで書いて朝日新聞の社説をみて、ちょっとびっくり。
「私たちは、上場廃止もやむを得ないと考えてきた。」
ここでいう「私たち」は当然「朝日新聞社」なわけですよね? そうした認識の下に一連の記事を載せてきた、というふうに読めるんだけど……うーん、ある意味勇気があるなあ(もちろん金商法に詳しい専門家の意見をとっているんだろうけど)。