桂枝雀落語大全 第二集「くしゃみ講釈/鷺とり」

ときどきふいに桂枝雀の噺を聞きたくなる。
そのたびになんとも言えないやるせない気持ちになるけれども、ビデオやDVDで聞き始めてしまうと、そんなあれこれもすぐに忘れてしまい、あとは枝雀の噺にただ魅了されるだけの時間になる。きょうは「くしゃみ講釈」。いつもながらの爆発的な芸に、無抵抗に腹をかかえるしかない。

このDVD「桂枝雀落語大全」の各集には、縁あった関係者が枝雀の思い出を語るコーナーがある。語られる内容は楽しい話、沁みる話、それぞれだ。この第二集では、弟弟子の桂ざこばが出ていて、その話が素晴らしくイイ。

ざこばが枝雀をいかに慕っていたかはよく知られている。ホントかどうか知らないがざこば一門がかつて協会を脱けた際のエピソードは有名だし、枝雀の追悼番組で涙と鼻水をだらだら流しながら「サイナラ…」と小さく言ったあとにさらに感情を噴出させたシーンは、長く憧れ、時にはその芸の高みに嫉妬もし、しかし何よりも弟弟子であることが嬉しくてたまらない、そんなざこばの長年の兄弟弟子愛(そんな言葉があるのか知らないが)を無条件に感じさせた。

ここではざこばはそこまではシンミリしていない。ある日の枝雀の「くしゃみ講釈」がいかにスゴいものだったかを、半ばあきれたような表情で淡々と語っている。「…おもろかったなぁ」とつぶやくざこばの喪失感の大きさがじわり沁み伝わってくる。ほんとに好きだったんだろうなあ。

桂 枝雀 落語大全 第二集 [DVD]

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