大塚将司「日経新聞の黒い霧」(講談社)

日経新聞の黒い霧

日経新聞の黒い霧


先日、某国内系通信社の記者をしている知人の結婚披露宴に参加したときのこと。
新郎の上司や先輩が何人か続けて挨拶に立って、新郎を含む自分たち新聞記者の日々の仕事ぶりを話されたのだが、皆、記者がいかに非人間的な業務に追われているか、いかに特殊な仕事であるか、そして、新聞記者という人種が社会人としてはいかに「駄目」で「常識知らず」であるかを強調され、だからその奥さんになる奇特な新婦よ、新郎の今後の振る舞いをどうぞ許してやって欲しい、とシメていた。
スミマセン、己らの世間離れ加減は十分自覚しているんですけども…という言い回しを恒常的にいろんなところで使っていることがうかがえ、ちょっと笑えた。意地悪い言い方だけど、隠し切れない、というか、隠そうとしない特権意識とその無邪気さが微笑ましかったのだ。
これぐらい厚顔でないと新聞記者をやってても二流どまりなんだろう。悪い意味ではなく。


読まなければと思いつつ、ずっとほったらかしていた本書をようやく読んだ。
かなりユニークな本だ。異様といってもいい。
一番の読みどころは、鶴田某ほか日経新聞首脳の腐敗の実態、ではなくて、著者の同僚評だ。記者が記者を評する文章というのは、ありそうで実はほとんど見かけない。それも新聞の記者となれば皆無に近いのではないか(OB同士の誉め合いのようなダラ文は別)。新聞記者としてはかなり個性的といわれる著者だが、氏の評価基準も興味深いものがあった。また、日経新聞の紙面組みのタイムスケジュールや会議体の構造などがリアルに書かれているのも良。広報マンは参考資料として読んでおいて損はない。

余談だが、著者が自分がスクープしたとさりげなく断言している東京三菱銀行合併記事については、ほぼ同時に特ダネを放った時事通信社のストーリーを下山進「勝負の分かれ目」で併せ読むとより面白いと思う。


勝負の分かれ目(上) (角川文庫)

勝負の分かれ目(上) (角川文庫)

勝負の分かれ目(下) (角川文庫)

勝負の分かれ目(下) (角川文庫)