徳渕真利子「新幹線ガール」メディアファクトリー


新幹線ガール

新幹線ガール


全体としては好著だと思う。著者の、仕事への真摯な姿勢と誇りがリアルに感じられて良。宣伝色がやや強すぎるのが気になるけど、それを差し引いても、読後感は(後述の懸念を除いては)悪くない。

この手の本は、主観/客観のバランス次第ではとても読みづらいものに仕上がる可能性大だけども、そこがうまくいけば、自分が住んでいる世界のほんのすぐ隣にまったくの別世界が広がっていたことを気づかされるような、そんな魅力がある。その点、本書は良いほうに出ている。著者の個性に負うところが大きいのは言うまでもない。


ただ、編集サイドの姿勢には疑問を呈したい。
まずこのタイトルはどうなんだろう? また、掲載されている写真のうち何点かはある種の読者層を狙っていることがあからさまで、その選択には首を捻らざるを得ない。
編集者のあざとさが露骨に出すぎているわけだけど、この戦略はかえってこの著者・著作の魅力を削ぐことになっていると思う。そんなところでヘッジしなくても十分に内容で勝負できるはずなのに。
あるところで本書の感想として、新幹線に乗るたびに著者を探している、というのがあってちょっと寒気がした。本書の読まれ方がいろいろあるなかで、これは間違いなく最悪に近いものの1つだけど、その責任の大半は編集サイドにあると思う。著者のリスクをどう考えているんだろうか。著者が本書に書かれているような内容の仕事を長く続けて全うできる状況が、これまでと同様に維持されることを祈りたい。